教職課程センターについて

所長挨拶

 教員には、人が大人になるまでの一番成長著しい時期に集団で過ごす学校生活の場において、生徒に様々な知識を育み、成長を見守り、手助けし、助言を与えながら、その人間としての成長を促すとという重要な役割があります。学生の皆さんも、多かれ少なかれ、中学時代あるいは高校時代に愛情をもって自分たちを教育しようとしていた先生方とのよき思い出を持ち、その先生たちから自分たちが与えてもらったものを、今度は自分が生徒たちに与えたいという強い使命感を感じている人も少なからずいるのではないかと想像します。しかし、その使命の重要さゆえに、誰でも熱意があれば教壇に立てるというわけではなく、教員となるためには、原則として、その資格を得るのに相応しい勉学を収め、学校の種類ごとの教員免許状(中学校又は高等学校の教員の場合は学校の種類及び教科ごとの教員免許状)を取得していることが不可欠です。

 慶應義塾には、明治初期から優れた中等教育の教師を養成することに力を注いできた長い歴史がありますが、特に、1983年に開所された教職課程センターは、日本初の「センター方式」を採用した組織と言われています。それはすなわち、当センターが教職課程および教員養成に関わる業務を全塾的に円滑に運営することを目的とし、塾の各学部・各研究科と連携し、慶應義塾の各キャンパスを核となってつなぐという役割を担っていることを意味します。そして、運営委員会のメンバーである、教職課程認定を受けている各学部の学部長、各研究科の委員長、通信教育部長からご理解とご協力をいただき、さらには、各学部、各研究科及び通信教育部から選任された代表者となる教員と、教職課程センター所長・副所長、教職課程センター専任教員、実務家教員である訪問教員が出席して行われる学務委員会という会議を頻繁に行って、教職課程センターに係る詳細が決定されます。さらに、慶應義塾や慶應義塾外の先生方によって、教職免許を取得するために不可欠な大変多くの質の高い教職課程科目の授業が提供されています。このような全塾的なバックアップをいただきながら、教職課程センターの運営はなされています。

 教職を志す皆さんに忘れてほしくないのは、教えながら同時に自らも学ぶことを尊しとするいわゆる「半学半教」の精神です。よく教えるためには、自らも常に学び続ける気持ちを持ち続けることが必要です。そのためには、学生時代にできるだけ幅広く、そして深い専門的な知識を学ばなければなりません。教職免許をとるためには、一つ一つの授業としっかり向き合って単位をとり続ける根気が必要ですが、ただ単に単位をとるだけではなく、自らも学ぶプロセスを実践してみてどのような効果が得られるかを知り、教えることと同時に学ぶことが何よりも好きであるという経験をどんどん積み重ねていっていただきたいと思います。教職課程に登録された皆さんは、その学びを支援する「教職ログブック」というツールを利用することができます。これは、皆さんが授業履修計画を立て、履修する授業に参加するための情報などを伝え、情報交換の場としてのコミュニティーを提供し、これまでの学びの成果を自ら評価するなどに大変役に立つと思いますので、どうか積極的に利用してください。

 そして最後になりますが、教職を志してからそれを全うするまでに、皆さんが感じる困難や疑問や悩み等はそれぞれの状況において異なるでしょう。そんな折には、教職課程センターの専任教員と事務スタッフが一人一人の悩みに寄り添い、協力していきたいと考えていますので、どうか躊躇せずに相談してみてください。皆さんの成長を力強く支援していきたいと思っています。

教職課程センター所長 鈴木千佳子(法学部教授)

2023年2月